新規事業をやろうと思うと、ターゲットを絞る必要が出てきます。
競争が一昔前よりも激しい最近では、ターゲットは絞りに絞った方がよく、ピンポイントで特定の関心を持つ個人や法人を攻めるやり方が主流になってきました。フォーカスマーケティングという言葉も出てきているようです。
例えば、AKB48ですが、最初は一部のマニア向けだったと言っていいでしょう。「アイドルを自分で育てる」という感覚を喜ぶ一部の(多くは)男性にとって、アイドル育成ゲームやサッカーチームを育てるゲーム等はありましたが、実際のアイドルを育てるとなると話は別でした。コンセプトは、『会いに行けるアイドル』であると公式サイト(ブログ?)でも書かれています。
同じような話は、いずれも女性誌の「美ST」や「STORY」の編集長を務められた山本由樹氏の著書「欲望のマーケティング」にも記載されています。詳細は書籍に譲りますが、競争の激しい女性誌の中で成功を収めた理由の一つとして、ターゲットを絞りに絞るという事が書かれています。
余談ですが、山本氏の著書は競争が最も激しい水準にある女性誌の業界で成功を収め続けてきた経験に基づき書かれたものであり、秀逸だと思います。特に、40代女性というターゲット層がもつ、本人さえもうまく表現できない欲望を表現してあげるという知見には専門家としての凄みを感じました。
また、日産「JUKE」についても、実在するイギリス人男性ウィリアムさんの好みそうな自動車にしたというのはよく知られています。
極端な言い方をすれば、競争の激しい市場では、ターゲット(商品コンセプトを作ったり、ディテールを作りこむフェーズでの想定ユーザーと言った方が正確です)は1人いればいいのです。
色々な事例や身近で起こることを紐解いて思うのは、ターゲットを狭く絞るという発想も大切だと思うのですが、むしろ、ターゲット(層)を代表する人物が商品やサービスを利用するストーリーを考える方が大切になってきたということです。ターゲットのプロファイルを特定するのは常套手段ではありますが、さらに一歩踏み込んで、プロファイルを有する実在の人物を特定して、その人物を研究するのです。
この方法は、もちろん、全ての市場で実施できるマーケティングの方法だとは思いませんが、競争の激しい市場の方法論は、必ず競争が激しくない業界にも、遅かれ早かれ、降りてきます。その意味で、最も進んだ方法論を知っておくのは重要だと言えるでしょう。
新規事業をしようとする我々は、自分の担当する市場の競争の激しさを理解して、プロファイルで済ませるのか、それともストーリーを考えるまでするか、選択出来るレベルでいたい者です。