アイデア出しのためのバックキャスティング ~未来を造る人になる#9~

こんにちは、JOSUIの中村です。
新規事業・研究開発リーダーに向けたメールシリーズ「未来を造る人になる」の第9回目です。

今回は、「#9アイデア出しのためのバックキャスティング」というテーマで書きました。

前回は、「#8アイデアを出すコツ」というテーマで書きました。前回のエントリーは こちら

メールのバックナンバーは こちら からご覧ください。

バックキャスティングというアイデアを出すための方法もあります。

<バックキャスティング>
バックキャスティングとは、「未来を予測するうえで、目標となるような状態・状況を想定し、そこから現在に立ち戻って”やるべきこと”を考えるやり方。地球温暖化などの環境問題解決に役立つ手法として注目されている。」と定義されています。

この分野では、東北大学の石田教授が先駆者であるため、より詳しくは 著書 をご覧いただきたい。

<時代は変わった>
時代は変わりました。「いいものを作れば売れる」という時代はとうに終わり、「いいものであっても、売れない」時代に突入しました。

我々研究開発リーダーに求められるのは、技術的に優れたものではなく、ユーザーのメリットが優れたものが求められるようになりました。

何がユーザーのメリットなのか、研究開発リーダーにはその探求者の役割が求められるようになってきました。

ユーザーメリットの探求については、エスノグラフィ、リードユーザー法を含めて、VOC(Voice Of Customers)を活用する方法や、特許情報を活用する方法、先端技術から発想する方法 等々ありますが、ユーザーメリット探求法(アイデア出しの方法)は数限りなくあります。

私は、バックキャスティングは、その中の一つに位置づけられると考えています(活用方法はそれだけではありませんが)。

<バックキャスティングの進め方>
バックキャスティングの進め方については、東北大学の古川教授のコラムが参考になります。以下、「」内で引用します(編集しています)。

「第1ステップとして、まずは、将来の環境制約条件を設定します。例えば、環境制約が厳しくなる2030年の日本の人口、エネルギー、資源、地球温暖化、水資源、食料、生物多様性に関して信頼の置ける国のデータ等を用いて定量的に理解するのです。
第2ステップとして、この環境制約条件のもと社会状況を描きます。例えば、ガソリン代が3倍以上に高騰するのであれば、自動車を使う人が減り、道路がすいてくる、あるいは、車線が余ってしまうかもしれない、という社会状況を想像するのです。
第 3ステップでは、2030年の社会状況から見て、現在のままでは発生してしまうであろう問題を見つけ出すのです。これは将来から現在を逆に見つめており、まさにバックキャスティングと言える部分です。そして、もう一度、2030年に自分を置きなおし、発見した問題を解決するソリューションを見つけるのです。
最後に、取り上げた問題と、そのソリューションを含んだ心豊かなライフスタイルを描きます。」

引用元の文章は こちら です。

引用したこの文章では、「想像」「心豊かなライフスタイル」「問題を発見」「発見した問題を解決するソリューション」というのがキーワードだと思います。

<研究開発リーダーにとってのバックキャスティング>
研究開発リーダーにとってのバックキャスティングはどのように捉えられるべきでしょうか?

バックキャスティングは、社会という広いものを想定する手法で、引用した事例のように石油資源の枯渇や自動車といった誰しも関係のあるものに適用するのは非常に良い手法です。

しかし、多くの場合、研究開発リーダーの扱う製品・サービスは、「社会」とか「自動車」に比べると小粒なのです。

製品と社会のつながりを考えなければならないため、「本当に使えるのかな?」と疑問に陥りそうになります。

しかし、当然ですが、すべての製品は社会に必ずつながっています。

極端な例を挙げましょう。例えば、「プレス成形機」という機械を作っているメーカーのことを考えてみましょう。

メーカーの主要顧客は、かつては国内の自動車メーカーだったのですが、海外生産が主流になり、自動車メーカーについて海外に進出しました。国内向けは既存製品のメンテナンスや置き換えニーズのみになっています。

このメーカーはバックキャスティングを使えるでしょうか?

結論から言えば、使えます。

いきなり、プレス成形機の未来を予想するとつまづきます。なぜなら、社会とプレス成形機では距離がありすぎるからです。しかし、この会社の顧客は自動車会社です。顧客である自動車会社の関係する「社会」である、自動車の未来を予想すればつまづきません。

何を言いたいかと言えば、BtoBの会社は、「顧客の未来」を予想するためにバックキャスティングを使えば良いのです。BtoB、BtoBtoC、BtoBtoBtoBtoCなど、世の中の会社は最終的にC(=社会)と関わっています。

そのため、顧客、あるいは、顧客の顧客が関係する社会を分析することが必要です。それができれば、自社製品に求められる要件を洞察することができるからです。

石油資源の枯渇等から、燃費性能が自動車に求められるようになってきており、国内、海外で共通して求められるようになってきたのは自動車の軽量化です。

自動車の軽量化のために、プレス成形機が何ができるのかといえば、何でしょうか?

という道筋で考えると、研究開発のアイデアが出てきます。

次回は、今日の続きで「#10 アイデア出しのためのバックキャスティング2」と題してお送りしたいと思います。