ステージゲート法等の開発マネジメント法 ~未来を造る人になる#13~

こんにちは、JOSUIの中村です。
新規事業・研究開発リーダーに向けたメールシリーズ「未来を造る人になる」の第13回目です。

今回は、「#13ステージゲート法等の開発マネジメント法」というテーマで書きました。

前回は、「#12ロードマッピング2」というテーマで書きました。前回のエントリーは こちら

メールのバックナンバーは こちら からご覧ください。

前回は、ロードマップが研究開発の方向性を決めるための意思決定材料になることを書きました。

多くのものづくり企業では、開発テーマを絞り込んだり、不確実性を低くするための開発マネジメント法が導入されています。
その一つに、ステージゲート法があります。ステージゲート法がすべてというわけではありませんが、欧米先進企業が積極的に取り組んでいることもあり、日本でも導入が進んでいます。
ステージゲート法は、検討する「ステージ」と評価のための「ゲート」から構成されており、多くの企業で研究者がテーマを発表し、研究開発会議などで評価するという点では同じです。
ステージゲート法が異なるのは、いくつのステージ・ゲートで区切るのか、評価するポイントや検討するポイントはなにかを標準化しているかどうかが異なります。また、どのような新規事業を生み出したいのかを決めた上で、評価ポイントをチューニングする工夫がなされる点も特徴があると言えます。
建設業界でも工法の標準化が取り組まれていましたし、IT業界でも、システム開発の標準化は進んでいますが、それと同じことです。納期を急ぐ場合、精度が要求される場合で運用方法やプロセスが異なるのです。
研究開発でも同じように標準化が取り組まれ、その代表的なものがステージゲート法です。ステージゲート法を導入した組織は、次のような発展の段階をたどることになります。野球に例えて説明してみたいと思います。

<レベル1>バントしかできない。
バントは、小粒の開発テーマを意味しています。パン屋さんが、菓子パンばかりのラインナップから惣菜パンを開発するようなイメージです。野球でのバントは非常に重要なものですが、バントだけというのも困りものです。開発マネジメント法を導入した後は、小粒の開発テーマしかできなくなる時期があります。というのは、開発マネジメント法の導入の目的は「不確実性を減らす」ことです。不確実性を減らすには、テーマそのものを理解する必要がありますが、理解するにはやろうとするビジネスを分かる人が必要です。開発マネジメントの初期段階では、新規ビジネスを理解できる人がいないことも多く、現状の延長線や既存の枠組みの範囲内の新規事業しかできない傾向にあります。それがバントです。

<レベル2>ゲートが厳しすぎてテーマが枯渇する。
バントのような小粒テーマばかりが増えると、経営者から「もっと大きなテーマはないのか?」と言われることになります。研究開発責任者としては、大きなアイデアを出すようにエンジニアに促します。当然、玉石混交、様々なアイデアが出ます。アイデアが出るには出るのですが、ゲートキーパー(評価者)はレベル1と同じで、異分野はよく分からないのです。そのため、大型のテーマは次々と却下され、不確実性どころかテーマごとなくなる傾向があります。

<レベル3>ヒットが狙えるようになる。
ヒットは、既存の事業分野からはみ出すようなテーマを意味します。例えば、パン屋さんがお菓子屋さんをやるようなイメージです。同じ顧客基盤、同じ技術基盤・製造設備が使えます。レベル2の反省から、評価者の理解力が問題だとわかると、ゲートキーパーの理解力を高度化させる事になります。人が変わる、ゲートキーパーが教育を受ける、などです。こうして理解力・評価力が増すと、テーマの不確実性を評価しつつ、テーマをブラッシュアップするような運用がなされます。こうして、ヒットが生み出せるようになるのです。

<レベル4>ホームランを狙えるようになる。
ホームランは、営業基盤も技術基盤も異なるようなテーマを意味します。例えば、パン屋さんが酒屋さんになるようなイメージです。非常にリスキーです。ホームランを狙う場合、社内で発起人となる人が絶対に必要になります。社長でもいいですし、社長が異分野の人を社内に連れてくるということを想定しても良いでしょう。そうして、発起人となる人が、異分野のことを理解して、開発マネジメント方法に沿って検討を進めていきます。(社長肝いりのプロジェクトは、開発マネジメント方法に沿わずに進められるような「オーナー会社」は想定から除外します)

<レベル5>意識して、バント、ヒット、ホームランの組み合わせを狙えるようになる
ホームランを打つのは難しいものの、打つ準備くらいが整っている段階では、意識してバント、ヒット、ホームランを打ち分けられるようになっていきます。というのは、バントやヒットのようなテーマの検討方法、投資金額の目安はすでに付けられるようになっていますし、投資を生み出す利益の源泉もしっかりしているからです。儲かっていないと開発はできないのです。

次回は、開発マネジメント法の一つ、ステージゲート法の特徴を見てみましょう。