先日、とある企業で打ち合わせをしている時、面白い話を聞きました。
相手方は大手企業の方。研究所で研究企画部門のマネージャーをなさっている方です。研究企画部門というのは、研究テーマを考案したり、研究所全体の研究者に対して教育は情報提供をする司令塔的な役割を担う部門です。
研究所全体として「研究開発テーマが出ない、出せない」という悩みを抱えていらっしゃいます。
ただ、教育はすでに十分(すぎるほど)しているし、アイデア募集もしている、必要 だと思われることは「なんだってやっている」状態でした。私が必要だと思うことも大半がなされていて、私も「うーん、そこまでやっていてテーマがでないの はなぜだろう?」と疑問に思ってディスカッションしていました。
顧客の所に行っているのかという点について質問したところ、その方は「うちの研究者は顧客の所にはよく行っているし、そこに問題はないのでは」という回答でした。
でも、いろいろなことをしつつも、テーマが出ないのはなにか問題があるはずだと思って、一段階掘り下げた質問をしました。
私「行くと行っても色々ありますが、どうやって行っているのですか?」
マネージャー
「営業に同行して、技術的な説明をしている」
私「それは本当の意味で顧客の所に行っていることになるのでしょうか?」
というやりとりがあったのです。
私にとっては、「顧客の所に行く」=潜在ニーズを見つけるために顧客とディスカッションをしたり、現場観察の機会を何とか作って行ったりすること、です。
しかし、「顧客の所に行く」=営業同行だったのです。もちろん販売支援は重要です し、それ自体否定するつもりはありませんが、開発テーマを考案する研究者が営業同行したとしても(そこでヒアリングする場合は別にして)、テーマの材料に なるようなインプットはもらえない事の方が多いと思います。
研究開発テーマや商品を企画する上で顧客理解が重要なのは言うまでもありません。
ただ、一口に「顧客理解」と言っても色々あるということです。
1)営業同行をすることで顧客理解をしたという研究者もいるかもしれません。上で説明したタイプ。
2)顧客の所に行かずとも、フレームワークを駆使して顧客を分析して、顧客のことを理解したということも言えるかも知れません。コンサルティング会社のやり方かも知れません。
3)新聞やニュースで出てくる顧客の公知情報を知って、顧客の概要を理解することも顧客理解だという方もいると思います。調査会社のやり方かも知れません。
4)顧客の所に深く入って顧客の気づかない課題に気づくのが顧客理解だという方もいるでしょう。とあるメーカーさんのやり方です。
いずれも正解だと思います。
ただ、研究者や事業開発に携わる人間にとって必要な「顧客理解」というのは何でしょうか?
皆様はどのようにお考えですか?