新規事業・研究開発リーダーに向けたメールシリーズ「未来を造る人になる」の第47回です。
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最近興味深いと思ったエピソードがありましたので、ご紹介します。
セミナーをしていた時のことです。
セミナーではよくお話するのですが、私が提案しているのは、顧客価値を重視した研究開発テーマの考案です。
どういうことかといえば、顧客をよく研究して、顧客が将来必要とするものであろうものを先取りして開発してしまおうというものです。
セミナー終了後、受講者からこのような質問を受けました。
「顧客価値、顧客価値というが、技術や商品も重要ではないか。技術や商品をないがしろにして顧客価値を重視するというのはどうも違和感がある」
といった内容のものでした。
この方のご指摘はごもっともだと思います。
私も技術や商品をないがしろにしているつもりはありません。これまでの日本の会社は、技術や商品を重視しすぎて(ものづくり主義)顧客価値を犠牲にしていることが多いので、あえて逆のことを強調しているのです。
そのことが招いた質問でした。
問題の原因はセミナーにおいて、私の言葉が足りなかったことにあります。
この質問を受けて、私の回答は、簡単に一言で言うならば、
それでも顧客価値を重視すべきだというものでした。
何故ならば、顧客価値のない所に技術は必要ないと思うからです。
先日、青色LEDの開発に関する関係者がノーベル賞を受賞しました。
アルフレッド・ノーベルの遺言には、ノーベル賞の受賞者に値する人についてこう書かれていたそうです。
“those who, during the preceding year, shall have conferred the greatest benefit on mankind. ”
「前年に最も人類に貢献した人」
ノーベルも「最もすごい技術を開発した人」ではなく、賞を受賞するのは人間にとって価値のある技術なのだということをこの言葉は表しています。
翻って、私達の足元を考えてみると、同じことが見えてきます。
基礎研究に携わる場合などの一部を除いて、「人類のために」仕事をしているとは実感しにくいと思います。しかし、顧客のために仕事をしているとは実感出来ると思います。
実感できるのであれば、その気持ちを最大限に発揮しませんか?
お客さんが見えている課題を解決してあげよう、
お客さんが見えていない課題でも先取りして解決してあげよう。
そんな気持ちが持てるでしょう?
さあ、我々エンジニア・研究者は、顧客を喜ばせるために、技術を開発しようではありませんか。
余談1)経営者の皆様へ
エンジニア・研究者も含めて、社員全員が顧客のために働いています。社員にはノーベル賞みたいなものはありますか?ぜひ、短期的な視点の賞だけでなく、中長期的な顧客への貢献を表彰する制度を設けてくださいね。
余談2)
顧客を喜ばせたい、役に立ちたいと思う気持ちは尊いものだと思います。その気持ちは、顧客に直接言われた、短期スパンなものかも知れません。顧客に言われなくても、中長期的に課題になるであろうことを予想したものかもしれません。
どちらも尊いものです。